里崎が勤務2年目を迎える中央子ども家庭センターに、あの田丸が異動になってやってきた。キャラの異なる二人はチームを組んでケースに対応する。困窮した家庭を支援する一方、力及ばず壁にぶつかることも経験。そんな二人が次に直面したのは、卑劣な性的虐待だった。
著者 安道 理
価格 1,980円(本体1,800円+税)
判型 四六判
頁数 約300ページ
ISBN 978-4-88416-302-0
発行 株式会社せせらぎ出版
コミュニティ・パブリッシング事業部
現役の公務員で、元児童福祉司。安道理はペンネーム。一般行政職(事務職)として地方公共団体に入庁。いくつかの部署を経て、児童相談所に異動。そこで業務内容の特殊性、危険性、そして、過酷な状況に曝される子どもたちの現実を目の当たりにし強い衝撃を受け、人生観が一変する。
異動後、ケースワーカーとして必要な面接技能等の研修を受けながら、児童福祉司免許を取得。過酷な現実に心を痛める一方で、立ち直っていく家族の感動的な姿にも触れたことで、児童相談所を最も過酷で最も感動的な職場と感じるようになる。
その本当の姿を広く伝えることで、児相の職員や、福祉をめざす若者を勇気づけ、さらに悩める親子を児童相談所に導くことに繋がると考える。
なお、現在は児童相談所から一般行政職に異動になっている。それに伴い肩書も「元」児童福祉司とした。
今回の作品も全般にわたって、私は、できるだけ現場の対応を忠実に描くように努めたつもりである。ただ、小説という枠組みを活用する以上、読みやすさや、スピード感にも気を配る必要があったのも事実である。例えば、立ち入り調査については、最近では以前と違い家庭裁判所への手続きが必要となっている。対象となる家庭を訪問し、面会できない場合や、立ち入り調査を拒否された場合、家庭裁判所に、該当家庭への臨検の承認を求め、承認されてやっと相手の了解を得ずに家庭に立ち入ることができるというのが現状である。しかし、今回扱ったような新生児の生命にかかわるようなネグレクト家庭への立ち入り調査を実施するにあたり、家庭裁判所の承認を求めている余裕があるのかと問われれば、答えに窮するところである。
一般の読者の方々には、児童相談所の職員が、過酷な仕事と向き合いながら、焦る心を抑えつつ、こうした司法手続きもこなしているという事実を、知っていただきたい。
私自身は、変わりゆく児童相談所の姿をこれからも見守っていきたいと思っている。そして、今回の法改正が、現場を現状より少しでも改善する方向に進める結果を生むかどうかを注視していきたい。何よりも苦しんでいる子どもたちにより良い未来を与えるような改正になることを願ってやまない。
2018年1月
児童虐待防止協会
津崎哲郎先生ご推薦
児童相談所で遭遇する様々なケースを通して、熱くしかも冷徹な心で挑む職員たちの日々の奮闘を、小説という手法を用いて巧みに再現した感動の物語である。本書は、とりわけ性的虐待ケースに焦点を当て、子どもの保護、親との緊迫したやり取り、被害児にとって過酷とも思える法廷での展開に至るまでの流れを見事に再現している。児童相談所に勤務する職員のみならず、子どもに関わるあらゆる分野の方々に是非一読をお勧めしたい臨場感あふれるよき解説書の役割も果たしている。
特定非営利活動法人 児童虐待防止協会 津崎哲郎