ABCラジオ(AM1008 / FM93.3)「武田和歌子のぴたっと。」8月25日出演
パーソナリティ 武田和歌子さん(写真右)
パートナー アズマッチさん(金曜担当)(写真左)
酒井さん:病院などへ行ってがん患者さんやご家族にマッサージやお話を聞くということをさせていただいていたり、講演活動でご家族へ向けてのお話をさせていただいています。
武田さん:まさにその闘病中の方を支えているご家族へのいろいろなサポートをされているんですよね。その活動のきっかけというのも前回ご出演いただいた2015年にも伺いましたが、そのあたりも改めて伺えますか。
酒井さん:はい。私の父ががんになってそして、その看病をずっとキーパソンとしてさせていただいていたんですけど、その時つらかったり不安だったりいろんな思いをしました。そしてその後にこの思いは私だけじゃなかったんだ。同室の父と同じような患者さんのご家族も、同じようなつらい・悲しい・不安だということや、いろんなことを話していたなと気づいて、私はこの人たちに何かしてあげられないかなということと、「背中をさするひと」になりたかったのでこの活動を始めました。
武田さん:は~そうですか。実際に酒井さんご自身もお父様の闘病を支えているときに、こう、いろいろなことを自分でやらなきゃとか背負い込むということがやはりあったんですか?
酒井さん:毎日がそれでした。父が吐血もたくさんしてたので、血を吐かれることも初めて見ることだし、もうその時点で死んでしまうんじゃないかとか、もう毎日ドキドキしたんですね。何をしてもドキドキしていくそんな看病ばっかりが続いたというのがあって、もちろん今は医学が非常に進んでいるので、そんなことないっていう人もたくさんいるのでまた全然違う看病になるかとは思いますが、当時はそんな感じでした。
アズマッチさん:ん~僕なんかは(看病の)経験はないですけれどもたとえば、がんを患っている患者さんや看病をしている方としてね、なんか励ましてあげなきゃ! 気丈でいなきゃ!って思うわけじゃないですか。でもその方本人も誰かに慰めてほしいっていう気持ちは大いにあるわけですよね。
酒井さん:仰るとおりですね。ほんとに、みなさんが思っているのは一番つらいのはがん患者さん本人だろうと。でもそうではないんですよね。(アズマッチさんが)仰ったとおり、同じようにご家族も周りの人も同じようにつらかったり。でもつらさは違うんです。タイプが違うかったり、そのタイプの違うつらさは計りが取れないということですよね。
武田さん:はい。この度本を出版されまして、タイトルが『がん患者の家族を救う55のQ&A−癒やしのプロが体験から語る「つらさの乗り越え方」−』。価格が1,620円、アイエス・エヌ株式会社 コミュニティパブリッシング事業部から出版されています。看病の苦しみから逃れるための1冊、と帯にも書かれていますけれども、ご自身の経験からもそうでしょうが、どんな思いで綴られたんでしょうか?
酒井さん:ほんとに地獄のようでした(笑)。いろんなことを思い出すということが1つと、自分の体験と、それから相談に来られた方々とのいろんなことがあったので、そういったことを再度思い出すっていう作業が非常につらかったり。もちろん喜びもたくさんあったり。そしてこれから伝えたいな、こんなことも本当はあったんだよ、いいこともあったんだよっていう本当の現実も頭の中でグルグル思いながら、夜中ですね、朝4時くらいまでかかって毎日書いていたんです。
武田さん:まずですね、がんという病ですよねこの告知をされてからのご家族の受け取り方、これもとても大変なことだと思うんですけれど。
酒井さん:そうですね。それもとても多い質問なのですが、「どうすればいいんだろうか?」「心持ちはどうスタンスを置けばいいのか?」って聞かれるんですが、「お答えはございません」というのが答えなんです。
というのは、まだ私たちの、特に昭和世代の人はがんが怖いという風に(イメージが)すりこまれています。それが常識だと思っています。死ぬかもしれない。だとすると、その告知を受けたとき、オロオロするのは当然なことで、これを「しっかりしなさい」とか「落ち着いて」とかというのは無理な話です。なので一度オロオロしましょう、そしてオロオロした後が大切だということを知っていただきたいです。なので、告知をされました、そしてみんなでパニクリました、でもその後みんなで家族で話しあったり、自分たちはどういったことが不安で悲しいといったことを一度話し合います。話をしながら次に「未来と希望」の話をします。私たちはどういった生活と未来のためにどんな治療をしていきたいの?っていうことを考えていきます。
武田さん:具体的に話がここに辿るためには、いくらでも迷ったり苦しんで普通だよっていうことなんですね。何とかしなきゃ、なにか自分にできることをしなきゃ、でもなにもしてあげられることがないっていうときにもぶつかるのかなって思うんですけれど。
酒井さん:コツは、一緒に悲しんだり悩むということです。お互いが1人ひとりで悲しんだり涙を流すことはいけないことなんです。これは絶対やっちゃいけない。
アズマッチさん:なんかその、本人を目の前にして看病をする側がね、涙を見せちゃいけないとか思っちゃいそうじゃないですか。そこは我慢せずにということですか?
酒井さん:そうです。もし2人ならば顔を向き合って涙を流せたら1回で済むじゃないですか。がんというのは、特徴的なのは非常にスピーディに物事を進めていかなきゃいけない特別な病気です。なので、悩みもなるべくスピーディに解決を導いていかなきゃいけない。なので同時にが一番いいです。
武田さん、アズマッチさん:同時に「う~ん」と頷く。
武田さん:この度『がん患者の家族を救う55のQ&A−癒やしのプロが体験から語る「つらさの乗り越え方」−』という本を出版された「がん家族セラピスト」の酒井たえこさんに今日はご登場いただいています。
この本の中でたとえば、「看病で夜眠れない」なんていう声も寄せられたそうですね。そんな睡眠もとれない、体力的にも限界を感じている方からもご相談があったんですか?
酒井さん:そうですね。あのほぼ、末期がんの患者さんを看病されているご家族の悩みがこういったことが非常に多くて。でも、またこれも切り捨てるようで申し訳ないんですが、お答えはないんです。「寝れないんですけれど、どうしたらいいでしょう」、(私の答えは)「寝れないものです」。
というのも、本にも書かせていただいたとおりですね、末期がんで最終的な入院をされているとき、これは非常に緊急事態です。(私から問いかけますが)「あんたがたは緊急事態のときに寝れますか?」ということですね。気持ちがザワザワしていたり、付きっきりでいたいんですよ。その時に睡眠なんてとれません。だとしたら、もう寝ないでいいじゃないかと捨てておきましょう。でも、人間は横になるだけでも身体が休まるといいます。そして、ちょっとしたコツは、昼間は家族の交代がいたり、看護師さんが多かったりします。その時に仮眠をしていくという工夫をしていきましょうということです。
武田さん:そうですね。その1人で抱えない、みなでサポートをし合いながら、このあたりについても酒井さんは、ご自身で非常にわかりやすく「お役立ちリスト」なんてのをこの本の中で作ってくださっています。これも少しご紹介していただけますか?
アズマッチさん:ほぉう。
酒井さん:はい。これ、お料理です! あはは。
アズマッチさん:お料理!? え~? 食べるお料理ですか?
酒井さん:そうです。クッキングをしていくんです。つまりですね、看病のいろんな協力者を募りましょうということを私はお伝えしたいなと考えたときに、じゃ、誰と誰を、どのように手伝ってもらえますか?って相談者さんに向き合って話したときがあるんですね。この時にね、わからないんですよ、漠然としてるんです。自分に今協力者がいるかなんて普段考えないので。さて、と考えたときに、やっぱり看病をする人はまだまだ女性が多いです。女性はお料理をされる方が、ちょっと多いかなと思いまして、お料理の「さ・し・す・せ・そ」というものを連想しやすいようにくっつけてみました。
武田さん:「さ」は砂糖ですよね。
アズマッチさん:「し」は塩! 「す」は酢、(「せ」「そ」は)醤油、味噌ですね。
酒井さん:で、みりんが入るのかな。なので、砂糖は甘い人で、塩はどの料理にも使うので重要ポイントとか、お出汁は必ず使うので最重要になってきます。
アズマッチさん:人に当てはめていくんですね。
酒井さん:そうです。こういった形で一番面白いのが「みりん」かな。みりんはあってもなくてもいいので、あってもなくてもいい人。いたらいいなって人ですね。
全員爆笑
武田さん:あったら深みの出る人ですよね。たとえば今回この本の中に出ている「みりん」に値する人はご近所さんだったりするんですよ。どうですか? もちろん全部自身がん患者と向き合う看病をするという点に関してはご家族や病院関係者の方が中心となるかもしれません。親族もそうでしょう。ご近所さんだったらたとえばちょっと家のことをやるということを……。
酒井さん:そうなんです。植木に水やりをしておいてくれたり、犬の散歩をちょっとしておいてくれたり。そういったちょこっとしたお願いができるかもしれない。
アズマッチさん:そうか、ついつい病室に限って頭が働いてしまいますけど、そうじゃなくて生活全般でっていうことですね。
酒井さん:そうです、そうです。
武田さん:まさに出汁になる人というのは酒井さん、これどういう方なんですか?
酒井さん:これは最重要な方です。どの料理にも使っていくので、この人が割合決定権を持っています。重要な入院とか治療とかという決定権を持ちながらいろんなことができる人です。
武田さん:「塩」は欠かせない重要な人ですよね。何にでも使えるという。
酒井さん:そうです。オールマイティに支えてくれ、しかも重要な問題も言い合える仲の人がいいですね。
武田さん:しかも動ける人ということも必要かもしれませんよね。「酢」はここぞのときに役に立つ。特に患者さんご自身のたとえば職場の同僚であったりというのも、こういうところに値してくるという風に、非常に細かく「あっ! この人はこうだな」ってう割り振りをしていくだけで、自分の生活も看病の一環であるっていう考えにスイッチできるような気がするんですね。
非常に読みごたえがあって、ちょっと迷ったときの背中をそっとさすってくれるような、質問がたくさん寄せられて酒井さんも温かくお答えになっていますので、みなさんもぜひどうぞ。『がん患者の家族を救う55のQ&A』、アイエス・エヌ株式会社 コミュニティパブリッシング事業部から出版されています。通信販売から購入することができるということなので、みなさまぜひどうぞ。
最後に、まさに今患者さんを支えているご家族に一番伝えたいことを教えていただけますか?
酒井さん;はい。もう私のキャッチフレーズのようになっていますが「あなたは1人じゃないですよ」っていうことです。
武田さん:そうですね。つらさの乗り越え方、決して1人ではないと思うところから始めてみませんか。
この時間は「がん家族セラピスト」の酒井たえこさんにお話を伺いました。
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