眠れる児童福祉司

これまで読んだ職業ものの小説の中で、最も引き込まれたのがこの本である。しかし、単なる小説ではない。児童福祉司の私の目から見ても、中身はかなり専門的で、児童相談所の業務のポイントを詳細かつ広範囲にカバーした内容となっている。

そして、何よりも魅力的であるのが主人公の里崎。県庁の事務職であったが、人事異動で全く未知の児童相談所に配属された。そして、様々なケースと出会いながら魅力的なケースワーカーに成長していく。その熱意あふれる姿は、まさに「児童福祉司とはかくあるべき」という表現がぴったりであり、このようなケースワーカーがいる限り、児童相談所はまだまだ捨てたのもではないと感じさせられるのである。

これから児童福祉司を目指す人や、新任の児童福祉司のための入門書として、現役の児童福祉司のための研修教材としてお勧めしたい書である。また、広く世の中の人々にぜひ読んでいただきたい。

人を支えるということに、新たな視点を与えてくれると思うからだ。

私自身は、しばらく児童相談所を離れていたが、この小説を読んで、再び児童相談所に戻ろうと心が決まった。児童福祉司の熱い心を思い出させてくれた一冊だ。